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  • 執筆者の写真酔狂ヨシダ

American Football『American Football(LP3)』アルペジオとは挫折である。だが・・・。

更新日:2019年5月9日


 今年は、所謂「エモ」とジャンル分けされるようなバンドのレジェンド級が空前絶後の来日ラッシュで界隈が盛り上がっている。starmarket、Mineral、Death cab for cutie、Get Up Kids、そしてフジロックに3枚目を引っ提げたAmerican football(以下「アメフト」という。)。


 今作『American Football(LP3』は、個人的にアメフトの最高傑作と感じている。エモの要素を、本当に無理やりに3つの要素に分けるとすると、轟音・揺らぎ・反復(アルペジオ)の3要素ではないかというのが個人的な説なのであるが(独自説であり、異論を認める。前述のMineralはこの3要素がバランス良い。)、この3要素の中で、アルペジオに次ぐアルペジオ、ストイックなまでのアルペジオ派がアメフトである。アメフトはファーストからストイックにアルペジオ派だったし、ポスト・ロック寄りだったから、ジジイになればなるほどその良さが出てきた。

 今作は、1st,2ndにも増してストイックにアルペジオを重ねた結果、シーケンスとなって遂にテクノあるいはスティーブ・ライヒにたどり着いてしまっている。1曲目<Silhouttes>の鉄琴の音からの連想で、ピッチフォーク等本作についての複数のレビューが、スティーブ・ライヒの名前を挙げていることは納得である( https://pitchfork.com/reviews/albums/american-football-american-football-lp3/ )。

 しかし、ライヒ的なシーケンス感にまでたどり着き、ポスト・ロック寄りの重厚さを持つにもかかわらず、ポップで聴きやすいところが本作の凄さである。シーケンスを重ね、重厚なのにポップという聴きごこちは、歴史的名曲Tortoise<TNT>等も連想させる。そのようなポップさは、ヘイリー・ウィリアムズ(パラモア)、エリザベス・パウエル(ランド・オブ・トーク)、レイチェル・ゴスウェル(スロウダイブ)をゲストに迎えて丁寧に作り上げた「」に由来するものなのかもしれない。本作では、ゲストボーカルの入った曲(#2,#3,#6)が尊いまでの煌びやかさを放つ。そう、本作が最高傑作であると感じる理由は、これまで一番キラキラしているってこと。だってキラキラって最高でしょ(いきなり女子力)!!


 アルペジオとは挫折である。上昇したり潜ったり広げたりまとまったりした後にそれは途切れ、また初めからやり直しになる。アルペジオはその本質から言って儚い。しかし、そのようなアルペジオの儚さは、シーケンスと化すことで希望に変わりうる。何度も挫折するが、何度でも始まる。そしてそのような挫折と始まりの繰り返しの中に歌が明るみを与えている。この文章が、1000字を費やし記した内容を、ある表現者は一言で的確に表現しきる。


アンビエントな鬱蒼に刺す木漏れ日のよう。」(by 竹林現動・2019/3/24付ツイート→ https://twitter.com/GND_ZRM )。



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